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長編小説
僕と彼女の事情
始まりは一本の電話だった。
『もしもし? これ、繋がっていますか?』
大学三年生の春。
引きこもり染みた生活を送っていた僕の目の前に、
突然、彼女は現れた。
「案外、子供じみた顔していますね」
……はい?
彼女は口が悪い。
マイペースだし、強引だし、自分がやりたいことは何でも実行に移してしまう。
振り回されるこっちの身にもなってくれ。
「先輩?」
そして何より僕を悩ませるのが、
彼女がとってもとっても美人だということであった。
願い事は何でも叶えてしまうパワフルな彼女に連れられて、
僕の最後の、
大学青春物語は始まった――――。
ウソつきは殺人鬼のはじまり
平和だけが取り柄だったこの町で殺人事件が起きた。
それを知った学校一の変人-井上美琴-はあろうことか、殺人鬼を捕まえようと意気込んでいる。本気だろうか?
「もちろん本気よ。そのためのプランなら考えてあるわ。その名も『学校一の美少女が実は名探偵で、巷の難解事件をバンバン解決している件』。どう?」
……なんだその、B級ラノベみたいなタイトルは。プランでもないし。
そんなことから、オレ達の探偵ごっこが始まった――
短編小説
最悪の状況を彼女に見られてしまった
僕を遮るように、彼女は扉の前で立ち塞がっていた。その表情はやけに嬉しそうだ。僕は平静を装った顔で彼女を見つめていたが、彼女の次の言葉ですぐにパニックになった。
彼女は面白そうにそういった。
「もう泣いていないんですね」
ヤッパリ見ラレテイタ。
モシカシタラ、モシカシタラ、モシカシタラ、見マチガイダト思ッタノニ……。
「あ……ああ……」
僕はどうしようもない絶望感にかられた。いっそのこと、こいつを殺して僕も死んでやろうかと考えたがそんな度胸はなかった。
かといって彼女を無視して通り過ぎることもできなかった。
そんな僕を見下げたように彼女はあの例のーー意地の悪そうな笑みーーを浮かべているのだった。
鹿野さんはそっけない
鹿野さんは、素っ気ない。
クラスのみんなが挨拶しても「おー」くらいにしか反応しないし、
親友の真由佳ちゃんに対してですら「はよー」と「お」を省略するくらいの素っ気なさである。
授業中はいつも静かで手を挙げたり騒いだりしない。
たまに居眠りをしていて、先生に叱られても
「さーせん」とまるで反省してない態度で謝る。
これで成績が良いものだから、先生もきつく言えない状況が続いている。
それにプラスして言えば、彼女はとても美しかった。
眉目秀麗、才色兼備。
こんな陳腐な言葉を並べたくなるほど、彼女は綺麗で、魅惑的な女の子だった。
幽霊サヨ子
晃太の目の前に突然現れた幼女の幽霊・サヨ子。
おかっぱ頭から覗けるその顔は丸顔。足も丸いし手も丸い。唯一口元だけが四角く尖っていた。
「あの、どちら様ですか?」
晃太の問いかけに彼女は信じられないという顔でこちらを見やる。目は大きく見開かれ、怒りのせいだろうか、小さな身体がプルプルと震えている。まるでこれからポルターガイストでも起こさんばかりの状態に晃太は戦々恐々とした。
晃太の予想とは裏腹に、彼女は落ち着き払った様子でそういった。
「誰って、晃太。お前のおばあちゃんのサヨ子じゃろうが」
妙に威張った態度のおばあちゃんが、幽霊となって現れたのだった。
僕は彼女に恋してる
いつもお店にやってくる彼女。
僕は彼女に恋している。
話しかけるなんて出来ない日々を過ごしていたんだけど、ある日たまたま彼女が忘れ物をして……。