はじめに
この記事は「小説のネタ帳」について書いています。
- どんなネタを集めれば良いかわかる
- 集めたネタをどうすれば良いかわかる
- ネタをアウトプットする方法がわかる
物書きにとってアイデアが枯渇すること。それは、執筆スランプに陥るのと同じくらいの恐怖があります。
それを防ぐためには、日ごろからのネタ帳作りというものが重要になってきます。
今回はそんな小説のためのネタ帳作りについて書いていきたいと思います。
前半は「どんなネタを集めるのか」、そして後半は「集めたネタをどう料理するか」。
この二点について、実際にボクが作っているネタ帳を含めてご紹介します。
ネタ集めは大事、でもボクがもっと大事だと思うのは、集めたネタをどうやってエピソードにまで昇華できるか。これに限ると思うのです。
そんな話をしていきますので、気になる方は読んでみてください。
どんなネタを集めるか
まずは、ネタ帳に何を集めるか。
これは、ネタ帳を作る前の段階としてとても重要なことです。ネタ集めに答えはありません。工夫次第で、色んなものがネタになります。
ということで、今回は一例としてボクが行っているネタ集めをご紹介したいと思います。
言葉・表現
ネタ集めの基本だと思いますが、言葉と表現を集める作業ですね。
ボクは小説以外にも、マンガや映画などからネタを集めているのですが、そこに登場する言葉と表現にはいつも注目しています。
「これ、知らない単語だ」「これ、どんな意味なんだ?」
という言葉は必ず調べますし、良いと思った言葉はネタ帳にまとめます。
それと同じように、表現についても集めています。
「そうか、こういう言い回しの方が読者が理解できるな」とか「こんな説明の仕方があるのか」
といった上手い表現方法は積極的に集めています。
少しだけ、最近ボクが集めた言葉や表現を紹介しますね。
言葉・表現 | 備考 |
心にもないことをスラスラと | |
お心のままに | 思うままに、思う存分に |
鳴かず、飛ばずの夢をぶら下げたまま | |
黙する | だまる。無言でいる。 |
どんな言葉を集めるのかによってあなたの小説の個性が出てくると、ボクは思います。
あなたが「面白い」「良い表現」だと思うのはどんな言葉なのか。その良いと感じた言葉や表現で彩られた小説には、あなたらしさが出てきます。
ぜひ、沢山の言葉集めをしていきましょう。
キャラクター
ボクは普段からキャラクター小説というものを書いているので、魅力的なキャラクターになりそうなものは何でも集めます。
キャラクターに関係がありそうな「性格」「見た目」「意味のある誕生日」「クセ」「趣味思考」などなど。
数え上げればキリがありませんね。
キャラクター小説に限らず、魅力的なキャラクターを描ける作品というのは、名作になりやすいので、これは一般の方もネタとして集めてもいいと思います。
このキャラクターだけで1つの記事が書けるくらいたくさんのものを集めています。
詳しくはこちらを読んでいただければと思います。(記事:キャラクターの作りのコツ 魅力的なキャラクターはこう作ろう)
シーン・場面
小説の構想を練っていると、「ある場面が急に頭の中に浮かんできた!」 なんていうことも、あると思います。
物語というには短く、曖昧なものなんだけど、心を動かすような一瞬のワンシーン。それを、そのままにしておくのはもったいないので、ネタ帳に書き込みましょう。
このシーン集め。
昇華させると、一つのエピソードになったり、小説の世界観を構築する重要な要素なのでぜひ積極的に集めてみてください。
本の引用
本から集める引用文にも、大事なネタがあります。
ボクの場合は「ねぎま式読書」で、小説なんかを読んだらネタ帳にまとめています。
(記事:読書の質はアウトプットで決まる 簡単で有用なアウトプット法)
ここで大事なのは、引用する部分は「自分の心が動いた箇所だけ」。
作者が重要だといっているとか、誰かが重要だといった部分を書くことではない、ということです。
あくまでも、自分が大事だと思う引用文をネタ帳にまとめましょう。
引用するとともに、「何故、そう思ったのか」という理由付けを行うことも重要です。むしろ、こっちの方が重要だとボクは思います。
結局、小説は自分の思いや考えを物語として綴る作業。そのためには思ったことを言葉で表現しなくてはいけません。
そのための練習としても「何故、その引用で心が動いたのか」を丁寧に描写することが大事だと思います。
興味・関心事
この枠はとても広く一番、答えのない世界です。
小説に直接関わることでなくても、ネタとして集めることが重要なのが、この興味・関心事です。
小説に厚みを持たせるという意味で、今後の執筆活動に大きく関わる大切な作業です。
集める内容はなんでも構いません。自分が興味のあるもの、関心のあるものからネタになりそうなものを抜き出していく。
「今は書くことができないけれど、後々、小説にも出したいな」というようなものをネタ帳に集めると良いでしょう。
ボクが最近集めたのは「状況証拠について」です。
最近、事件ものの小説を執筆しようかと構想しており、そのためにネタ集めをしました。
それ以外にも「将棋が強くなる方法」といったこともネタ帳に書いています。
「状況証拠」のように、小説に直接的に関係のあるものでもいいし、「将棋」のように、間接的に関係するものを調べても大丈夫です。
重要なのは自分が関心のあるものを集めること。関心があれば、たくさんの情報を集めたくなるし、集めた情報を「生き生き」と表現することも可能です。
芸術
少し、ネタ帳からは離れてしまいますが、ボクは芸術分野にも触れた方が良いと思っています。
芸術といっても、「美術館の絵画を見ろ」とか、「自分で作詞してみろ」とか、そういうことを言っているのではありません。
芸術の分野で、心が躍るものがあれば、積極的に触れてみてもいい、というくらいです。
何故なら、芸術とは心の琴線に触れることであるとボクは考えているからです。
絵画や音楽などの言葉以外で語られたものに触れる。
それによって、活性化する自分の感情に、少しでも言葉付けができれば、芸術に触れた意味があります。
以上がボクが、ネタ帳として集めている部分かな、と思います。他にも、こんなものがあるよ、という方はぜひコメントを下さい。
どんなネタか、よりもネタをどうするか
ここからは、後半部分の「ネタをどう料理するか」というお話です。
実は、ネタを集める上で、この部分の方が重要だと考えています。
何故かというと、ネタを料理する作業というのは、アウトプットする作業だからです。
色んな情報を集める作業は大事ですが、これはあくまでもインプットの段階です。
結局、執筆の段階ではネタをアウトプットしなくてはいけない。このインプットからアウトプットへの変換が「ネタをどう料理するか」に繋がります。
いくら良質なネタを集めても、それらをアウトプットできなければ、どうしようもない。
逆にアウトプットがいくらでも出るのならば、インプットは少なくても良い。と、密かに思っています。
そこで、ここではアウトプットが増えるネタ帳の書き方というものをご紹介します。
ネタは1つのノートにまとめる
まず初めに言いたいのは、ネタはすべて1つのノートにまとめるということです。
先ほど出てきた「言葉」も「本の引用」も「キャラクター」も、すべて1冊のノートにまとめてしまうのです。
これは、良書:『読書は1冊のノートにまとめなさい』に出てくる方法です。
「え? でも、色んなものを1冊にまとめてしまうと、ごちゃごちゃして見栄えが悪いよ」
と思うかもしれませんが、それでいいのです。逆にごちゃごちゃとまとめた方が、アウトプットがしやすいのです。
何故ならば、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」だからです。これは『アイデアのつくり方』で語られた、アイデアの定義になります。
この「既存の要素の新しい組み合わせ」というところが重要です。
ノートに放り込んだ様々なネタは、既存の要素です。これらに新しい関係性を持たせなくてはいけません。
そのためには、それらをごちゃまぜにし、もう一度新しい視点で組み合わせていく作業が必要になります。
その作業をしやすくするためには、既存の枠にとらわれずに、ネタを1つのノートにまとめた方が良いのです。
ネタをアウトプットするとは、エピソードを思いつくこと
「アウトプットするのが大事なのは分かったけど、ネタにおけるアウトプットって何?」
この疑問は小説におけるアウトプットを考えてみればわかると思います。
例えば、連続殺人事件をテーマとした小説を書くとします。集めたネタを使って、最終的に何をするでしょうか?
「舞台を設定して」「キャラクターを登場させて」「事件を作って」「ラストはこうして」…………。
この中で、ネタがエピソードに昇華していることに気が付きましたか?
舞台設定やキャラクターは大事な要素ですが、これだけでは小説は成り立たない。あくまでこれらは箇条書できる事柄です。
- 舞台は駅前
- 孤独な心を持った少年
- 同級生を次々と殺していく
といったような感じです。これらを小説たらしめるにはどうするのか。これらに「エピソード」を加えていくのです。
例えば、
舞台は駅の改札 | 帰宅時間のせいか、駅の改札前は学生の姿であふれていた。 |
孤独な心を持った少年 | 彼は、長く伸びる前髪の隙間から、そんな学生たちの姿を睨むように見つめていた。 |
同級生を次々と殺していく | 「痛い!」 誰かがそんな叫び声をあげた。うるさかった車内が少しだけ静まり返った。少女は痛みの感じた足元に目をやる。するとそこには、真っ赤に染まっていく自分のスカートが見えた。 |
といった感じです。
こんな形で、ネタをエピソードに昇華する作業が、小説を執筆する上で重要になります。この作業を、ネタ帳でもやりたいのです。
エピソード集めをすること それがネタ帳の最終段階
言葉・表現 | 備考 |
心にもないことをスラスラと | |
お心のままに | 思うままに、思う存分に |
鳴かず、飛ばずの夢をぶら下げたまま | |
黙する | だまる。無言でいる。 |
この表は、一番初めに言葉・表現でボクがネタ帳に書いたものです。こちらの言葉や表現に対してもエピソード付けを行ってみてください。
「心にもないことをスラスラと」言ったのは、どこの誰でしょうか? どんな意図をもって、どういう口調で言ったのか。
そんな風にエピソードとして集めていくこと。これが、ボクが考えたネタ帳の最終段階です。
コメント