はじめに
この記事は「小説家を目指している社会人の方」に向けて書かれています。
- 小説家としての自分の基礎体力がわかる
- 時間がない中で執筆活動を進める「時間の使い方」がわかる
- 1冊書き切ることの大切さがわかる
「小説を書きたい!」
そう決意したけども、中々執筆活動が上手く行かない。そんな悩みを持っている方は、意外と多いのではないでしょうか。
特に社会人の方は、日中は仕事をしなくてはいけませんから「時間」との戦いも待っています。
仕事もこなし、プライベートも抱え、そして執筆活動も上手くこなさなくてはいけない。そんな三重苦を抱えた社会人の方が、小説家を目指すためには、どうすれば良いのか。
そこには、「筆力」と呼ばれるような小説を書く力以外にも、力を入れるべきことがあるとボクは考えています。
それは、「己を知る」「時間の使い方」「1冊書き切る」。この3つが大事だと思っています。
どういうことか、これから説明します。
己を知ること 今までの読書量はどれくらいか?
一口に社会人と言っても、小説家としてデビューする前の能力はバラバラです。
書けばすぐにでもデビューできそうな人から、もう一度中学生の文法からやり直す必要のある人まで、そのレベルは様々です。
そこでまずは、「己を知ること」から始めてみましょう。
「己を知る? 何それ?」
難しい話は何もありません。つまりは基礎体力的なものをまずは見よう、ということです。ここでは、今までにどれくらいの読書をしていたのかで判断してみましょう。
大学生までの平均読書数は約76冊
文部科学省の調査では、小学生から高校生までの読書数は、平均して70冊だということが分かっています。(参考:第四次子供の読書活動の推進に関する基本的な計画(関係資料)
残念ながら、大学生のデータが入っていなかったので、ここでは高校生のデータを流用してみましょう。
すると、大学生までの間に、平均して約76冊の本を読んでいることになります。(もちろん、この中には、小説とは関係ないものも含まれています)
どうでしょうか。今までの自分の読書量と比べてみて、もし、76冊よりも少ない場合は基礎体力がないといえます。
逆に、76冊よりも2倍も3倍も読んでいれば、基礎体力は大丈夫です。執筆活動を始めるためには合格ラインだといえるでしょう。
読書量から、今後やること
以下に、ボクなりの読書量と今後やるべきことを書いておきます。
75冊以下
活字に触れる時間を増やす必要があります。まずは小説を書く前に、75冊を目標に読書をしましょう。
最低限の基礎体力として、まずはみんなの平均である75冊を読破してしまいましょう。
75冊以上150冊以下
一定数の活字に触れていますが、まだ足りません。執筆と並行して150冊を目標に読書しましょう。
内容は小説関係が望ましいですが、何もそれに絞られる必要はありません。新書や歴史書など、自分が好きなもので構いません。
150冊以上
読書量は合格ラインだと考えられます。執筆活動に移ってもいいでしょう。ただし、読書はこれで終わりではありませんので、適宜、読書しましょう。
参考までに、ボクのこれまでの読書量というものも気になってみたので勝手ながら調べてみました。期間は大学生の内に読んだものです。(高校生以下の正確な記録は残っていませんでした)
結果は、大学生の内に約500冊の本を買っていました。(もちろん、すべてを読んだとは言えませんが……)(その内容はこちら→記事:白玉いつきの本棚)
小説を書いた数が0でも良いのか?
ここまで書くと「基礎体力って、小説を書いた量じゃないの? オレ、小説は書いたことないんだよね……」と心配になる方がいるかもしれません。
でも、大丈夫です。
ここで知りたいのは、あなたが「活字」というものに対して、どれだけ抵抗感がないかを調べるだけです。
小説は、1冊あたり大体10万文字あります。これだけの量を書き上げるとなると、それなりに活字に触れておかないと、途中で「辞めたい」と拒絶感が出てしまいます。
そうならないためにも、小説を書き始める前に、多くの活字に触れておく必要があります。
しかし、小説を過去に書いたことがあるかどうかは、別問題です。
そりゃ、書いていた方が良いでしょうけど、それは、他人よりも「ルールを知っている」程度のリードしかありません。
最初は他人よりも良く小説を書けるでしょう。しかし、小説を書く行為は長期戦。
今までにどれだけ小説を書いてきたかよりも、今までにどれだけ「人生を考えてきたのか」が物を言います。
小説を書いたことがないからと言って、小説家を目指すことを諦めてしまうのはもったいないです。
時間の使い方 小説を書く時間とアイデアをためる時間を獲得する
自分の基礎体力が分かったところで、次は実際に書くときに苦労するだろう問題について話します。
それが、「時間が足りない」問題です。
先ほど、小説は約10万文字だといいましたが、これは多いと思いますか? 少ないと思いますか?
ボクは多いと思っています。10万文字なんて、生きていくうちでどれだけの人が1冊にまとめるかどうか。新聞の文字数が約18万文字らしいので、その半分強を自分一人で書いていくことになります。(参考:数字で見る朝日新聞)
その文字数は、1日1,000文字書いても100日(3ヵ月)かかる計算です。もちろん、毎日書けるとは限りませんから、新人賞の応募期間までを逆算すると、当然、時間が足りなくなります。
そこで、執筆している時は、「時間の使い方」というものが重要になってきます。
小説の完成には「書くこと」と「考えること」が必用
ボクは、小説を完成させる行為を大きく分けるとすれば、2つあると考えています。
それは、「書くこと」と「考えること」です。
書くこととは、皆さんが想像するような小説家のイメージでしょう。
つまり、パソコンなり原稿用紙なりに文字を綴っていく作業です。決められた分量を決められたルールにしたがって淡々と書いていく作業です。
一方で小説家には、他にも大事なやるべきことがあります。それが「考えること」です。面白いアイデアを出したり、魅力的なキャラクターを出したり、ワクワクするような構成を考えたりしなくてはいけません。
このように、小説の完成には「書くこと」と「考えること」の2つがあることがわかります。
そして、これら2つに対してのアプローチは違うと、ボクは思っています。
「書くこと」に必要なのは、1つのことに集中できる「まとまった時間」。そして「考えること」に必要なのは、アイデアを大量に出せる「考えた回数」だと思っています。
「書くこと」には、まとまった時間で集中的にやっつけよう
まず、書くことですが、これにはまとまった時間が必用になります。
朝の1時間、寝る前の1時間など、時間を決めて「書くこと」だけに絞って行動できる時間を取りましょう。
なぜ、「書くこと」だけに絞るのか。それは、シングルタスクにするためです。
小説を書き始めた際、「このキャラクターはこう動かして、構成はこうして……」といったように、「書くこと」以外を行うとすると、おのずとマルチタスクになってしまいます。
マルチタスクでは、集中力が削がれてしまい、思うような執筆速度が出ません。
「せっかく集中してきたのに、スマホの通知音で集中力が削がれた」なんてことはないでしょうか? それと同じで、書く作業というのは、他をシャットアウトして淡々と行う作業に分類されます。
「でも、書くときも、色々とアイデアが必用でしょ?」
そう思うかもしれませんが、次章の「考えること」が上手く行えていれば、「書くこと」は「事前に決められたプロットに沿って」書くだけに徹せられます。
「これでいいのか?」「このキャラクターは必要か?」などといった疑問は「考えること」に譲って、「書くこと」では目標の文字数を書くことに徹しましょう。
集中して作業するためにオススメの本は、DAIGOさんの「自分を操る超集中」ではないでしょうか。
時間がない社会人だからこそ、ここに書かれているような、小さなことの積み重ねで時間を確保するのも手です。
「考えること」は、隙間時間を有効活用しよう
「じゃあ、考えることはどうするんだよ?」
ということで、次は「考えること」について書いていきたいと思います。
先ほどボクは、「考えること」は回数が重要だと書きました。つまり、時間よりも回数を気にしようということです。
よくあるのが、執筆しようとしてとりあえずパソコンの前に座ること。アイデアが出てくるまで、無限に待つ、という戦法です。
時間が有り余っている人なら有効ですが、時間がない社会人の方には不向きでしょう。
「アイデア」は、質より量が物を言います。
これは「考具 ―考えるための道具、持っていますか?」という本で出てくる言葉です。アイデアの質を求めるなら、まずは量を出さなくてはいけない。
例えば、小説の1シーンに対して、どれくらいのエピソードを考えていますか?
「当然、1シーンなら1個でしょ?」
実は、これだと少なすぎる可能性があります。まずは、2個3個と出してみて、それから「1番いいものを選択する」方が、面白い1シーンになりやすいです。
これは、小説全般のアイデアにも言えることです。とにかく量を出すこと。これは、何もパソコンの前でやらなければならないことではありません。
量を増やすには、時間よりも回数が有効です。つまり、「うんうん……」とパソコンの前で唸っている時間よりも、「これ」「これ」「これ」と、隙間時間にポンポンと考える方が、アイデアを出すことに向いています。
例えば、通勤時間とか、昼食の時間とか、ちょっとした空き時間などの細切れ時間を利用して、とにかく「量」を出すのです。
アイデアの出し方はこちら→(記事:小説のアイデアに困った時に試したい9つの質問)
まずは1冊書き切る
最後のアドバイスについて、疑問を持っている方も多いのではないかと思います。
「ん? 1冊書き切るって何だよ、その前の書き方とかの方が勉強する必要があるんじゃないのか?」
確かに、書き方というか、そういうものは必要です。
でも、それ以上に大切だと思っていることがあります。それが「まずは1冊書き切る」力をつける、ということです。
1冊の小説を完成することの難しさは、一度書いていればわかると思います。それはそれは苦労して書いた作品が、自分で読んでみても「つまらない」と思うかもしれません。
でも、最初はそれでいいと思います。それよりも、「1冊書き切った」というその力を褒めてあげましょう。
書き切ることの難しさは、カクヨムや小説家になろうのサイトで放置されている未完の作品数を見ればわかるかと思います。
まずは、書き切る。つまらなくても、文章がめちゃくちゃでも、思うように書けなくても、「完結させること」。そこから、社会人としての小説家への道がスタートすると、ボクは考えています。
良いじゃないですか、1冊目が駄作でも。そこから先のあなたの人生で、それはそれは素晴らしい小説をたくさん書けるのですから。
まずは1冊書いてから、「小説の書き方」などを勉強するのが良いと、ボクは考えています。
まとめ
社会人が小説家を目指す際に意識することは「己を知る」「時間管理」「1冊書き切る」の3つ。
社会人はとにかく時間がない。だから、出来るだけ「時間管理」の技術を身に付けよう。
小説家を目指すことで一番大事なのは、「まずは1冊書き切ること」。その難しさを知ってから、自分の小説をより良いものにしよう。
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